2020年度から、小学校でもプログラミング教育が行われるようになりました。
自分の子供がきちんと授業についていって、プログラミングを学べるのだろうかと不安になる親御さんも多いと思います。
さらに、文部科学省の発表によると、小学校でのプログラミング教育は、具体的なプログラミング言語を学ぶというよりも、「プログラミング的思考」を身につけることを目的とするとのこと。
これを聞くと、プログラミング的思考って何?プログラム言語を学ぶんじゃないの?と、さらに疑問が深まりますよね。
そこで今回は、これからの子供に求められる「プログラミング的思考」とは何なのかを分かりやすく解説し、子供に楽しくプログラミング的思考を身につけさせるおすすめの方法も紹介します。
文科省が発表したプログラミング的思考とは?|論理的思考との違いも解説
最近「プログラミング的思考」という言葉をよく聞くようになりましたが、この言葉が広まったきっかけは、文部科学省が公表した「小学校プログラミング教育の手引」が始まりだといえます。
この手引きによると、世の中はこれからさらにコンピューターが普及し、どの職業に就くにもコンピューターの知識が必要になってきます。
なので、コンピューターが動く仕組みともいえるプログラミングは、誰もが知っておくべき知識になるとのことです。
さらに、プログラミング的思考を身につけることは、思考力や想像力を育むのにも役立つという考えから、プログラミング教育が導入されました。
5つのプログラミング的思考
プログラミング的思考は、「抽象化」「分解」「順序立て・組み合わせ」「分析・評価」「一般化」の5つにまとめられるといわれています。
プログラミング的思考を理解するためには、この5つの言葉の意味を知っておくことが大切です。
1.抽象化
抽象化とは、具体的でない表現をすることです。
例えば、「リンゴ」や「バナナ」は具体的なものの名前ですが、これらは「食べられる木の実」という共通点があります。
そこで、この共通点を持つ食べ物をまとめて「果物」と呼べば、同じ性質を持つ食べ物をまとめて1つの言葉で呼ぶことができます。「果物」という名の具体的なモノは存在しないので、これは抽象化した表現ということになります。
抽象化は、物事の本質をとらえて、より深く考えるために必要な能力です。
2.分解
分解とは、物事や手順を小さな部分に分けて考えることです。複雑に見える問題を解決するには、この分解する能力が不可欠です。
例えば料理をする時、「親子丼を作りなさい」と言われても分からない時、「鶏肉を切る」「醤油を大さじ1入れる」などと分解すれば、料理が苦手な人でも分かるようになります。
3.順序立て・組み合わせ
仕事や生活におけるさまざまな課題を解決するためには、抽象化で物事の本質を見抜いて、さらに分解で複雑な物事を仕分けした後、それらを正しい順序・組み合わせで実行しなければなりません。
プログラミングは、正しい順序・組み合わせで実行しないとコンピューターが作動しないので、順序立て・組み合わせと常に向き合う作業だといえます。
4.分析・評価
プログラミングは、一度作ったらすぐにコンピューターが正確に動くということはほとんどありません。
一度プログラムを作った後は、間違った場所を分析して、何度も作り直した末に完成します。
また、プログラムには1つの正解というものはなく、一度完成したものを評価して、もっと良いプログラムが作れないか検討します。
5.一般化
一般化とは、問題の解決方法や順序などを、他のものに応用できるようにすることです。
例えば、親子丼の作り方の中には、かつ丼や天丼など、他の丼ものにも使える部分があります。この部分を一般化して「丼ものの作り方」とすれば、親子丼以外の丼ものも作れるようになり、一つずつレシピを覚える必要がなくなります。
プログラミングでは、同じプログラムをいろいろな場面で使えるように一般化する作業があるので、一般化の能力を自然と育てることができます。
「プログラミング的思考」と「論理的思考」の違い
ここまでの解説を聞くと、プログラミング的思考って、結局「論理的思考」のことじゃないの?と思うかもしれません。
それはある意味正解で、実はプログラミング的思考は論理的思考の一種です。
論理的思考とは筋道を立てて考えることで、「○○だから××、よって△△~」といった感じで、原因と結果を踏まえて、矛盾や思い込みを入れずに考えていきます。
これに対してプログラミング的思考は、文部科学省の手引きを元にかみ砕いて書くと、
「問題解決に必要な手順の組み合わせを論理的に考える力。および、より良い組み合わせを考える力」
となります。前半部分は論理的思考とほぼ同じですが、後半の「より良い組み合わせを考える」というのは、論理的思考とは違う部分だといえます。
受験でも絶対に必要なプログラミング的思考とは?|2025年度から変わる受験に対応するには
小学校・中学校・高校の授業のベースとなる「学習指導要領」が新しくなったのにともない、2025年度から大学入学共通テストの内容が変更されます。
2022年時点で小学生・中学生の子供は、この新しい共通テストで大学受験を行うことになります。
親御さんとしては、自分の子供が新しい試験を乗り越えられるか心配になるとともに、自分の時代とは違う試験を受ける子供に、親として何ができるのだろうと思うことでしょう。
2025年度から始まる新しい共通テストとはどんな内容なのか、そしてプログラミング的思考がどのように必要になるのか理解しておくことが大切です。
小学校でもプログラミングが必修に
2020年度から、小学校でもプログラミング教育が必修になりました。ただし、教科としてプログラミングが追加されたのではなく、算数や理科といった既存の教科の中で、プログラミング教育が取り入れられるということです。
例えば算数では、コンピューターを使って図形を作成するといった授業が取り入れられる可能性があります。
ただし、小学校のプログラミング教育はあくまでプログラミング的思考を育てるのが目的なので、必ずしもパソコンを使った授業が行われるとは限りません。
プログラミングの本格的な授業は、中学校から始まります。
2025年から共通テストに「情報」が追加
2025年度から始まる新しい共通テストでは、科目の分類が今までと大きく変わり、それにともなって問われる知識も変わってくる可能性があります。
例えば、日本史・世界史・地理は、「歴史総合」「地理総合」になります。他にも、数学の試験時間が10分長くなるなどの細かい変更点があります。
そして、一番大きな変更点といえるのが、新しい科目として「情報」が追加されることです。
情報の試験では、情報を正しく使って物事を判断する「情報リテラシー」に加えて、プログラミングの知識も出題されます。
大学入試センターが公表している「情報」のサンプル問題では、選挙の当選者数を求めるプログラムの穴埋め問題が出題されています。
これから求められるのは「暗記力」より「思考力」
今までのセンター試験では、主に知識や技能を問う暗記力が重視されていましたが、これからの共通テストでは、それに加えて思考力・判断力・表現力が重視されます。
AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が普及するこれからの時代は「第4次産業革命」と呼ばれ、社会の構造が今までとは大きく変わっていくといわれています。
野村総合研究所によると、AIなどの普及によって、今まで人間が行っていた職業の50%がAIにとって代わられると予想されています。事務員、電車やタクシーの運転手、建設作業員などは、将来AIに取って代わられてしまうと言われています。
また、AIの普及でなくなるかもしれない職業がある一方で、AIの普及により生まれる新しい職業があるといわれています。
例えば、AI・データの管理やコンサルティング、AIを使ったクリエイティブな仕事などが、将来は新しい職業となる可能性があります。
もしかしたら、今の子供たちが大人になった時に就く職業は、今の私たちが想像もつかない新しい職業であるかもしれません。
このように社会が大きく変化する時代において、受験制度や授業科目の変更は、日本の教育の目指すところが変わってきていることを意味します。
プログラミング的思考は、この新しい時代において求められる重要な力の一つだといえるでしょう。
一生役に立つプログラミング的思考とは?|プログラミング的思考は将来年収にも直結する
プログラミング的思考は、今まではプログラマーやシステムエンジニアなど、IT技術者だけが持っていればよい能力と考えられていました。
しかしこれからの時代は、たとえITの専門職に就かなくても、誰でも一定のプログラミング的思考を身につけるべきです。
受験のために必要なのはもちろんですが、プログラミング的思考はものごとをしっかり考える論理的思考の一種なので、身につけておけば受験以外のさまざまな場面で一生役に立つでしょう。
就職の幅が広がる
これからの社会では、就職の幅を広げるために、プログラミング的思考が今まで以上に重要になります。
IoTやAIの時代では、さまざまな職業でITを使った業務が増えてくるでしょう。プログラミング的思考を身につけておけば、ITを使った業務にも対応しやすくなります。
たとえITを使わない仕事でも、プログラミング的思考は幅広く役に立ちます。
例えば、営業で自社の商品を買ってくれる可能性の高い顧客層を分析したり、廃棄が少なくなる在庫管理の方法を考えるなど、仕事でプログラミング的思考が生かせる場面はたくさんあります。
プログラミング的思考を生かして仕事を効率的にこなす能力は、きっと就職の幅を広げるのに役立つでしょう。
プログラマーやシステムエンジニアといった、プログラミングを専門的に使う仕事に就きやすくなるのも、当然ですがメリットの一つです。
特に、日本はIT技術者の深刻な不足が問題になっているので、プログラミングを生かした仕事は売り手市場になっています。
年収アップも期待できる
プログラミング的思考は、将来の年収アップにもよい効果をもたらします。
例えば、プログラミング的思考を活用して仕事を他の人より効率的にこなせば、社内での評価が上がり昇進しやすくなるかもしれません。
また、プログラミング的思考を生かした高収入な仕事に転職して、年収アップを目指すこともできるでしょう。
身近な場面でも幅広く活用できる
プログラミング的思考は、就職や年収といった人生の重要な場面だけでなく、日常生活の身近な場面でも幅広く活用できます。
例えば、料理や買い物といった家事は、プログラミング的思考を無意識に使っている例だといえるでしょう。
料理や買い物では、どの材料を用意してどういう順序で調理するのか、買い物なら何を買うべきで、どのお店が品揃えがよく安いのかを考えますよね。
こういった事を考えるのは、まさに前の章で解説した「分解」や「順序立て・組み合わせ」であり、プログラミング的思考が大きく関係しています。
他にも家計の管理など、プログラミング的思考は生活のあらゆる場面で役に立つものだといえます。
今から身に付くプログラミング的思考とは?|小さいときからの積み重ねが一番大事
プログラミング的思考は小さい時からの積み重ねが大事ですが、小学生に本格的なプログラミング言語を学ばせるのはまだ難しすぎるかもしれません。
しかし、プログラミング的思考を身につける方法はプログラム言語だけではなく、子供でも楽しみながら習得できる方法がたくさんあります。
子供が興味を持って続けられる方法を見つけて、楽しみながら自然とプログラミング的思考が身につくようにしてあげましょう。
子供向けのプログラミングスクール
昔はプログラミングスクールといえばプログラマーを目指す大人向けのものでしたが、最近は子供向けのスクールも増えています。
子供向けのプログラミングスクールでは、「Scratch(スクラッチ)」を始めとする、子供向けプログラミング言語を学ぶことが多いです。
Scratchはプログラム言語を子供向けに改良したもので、子供でも簡単なゲームやアニメーションを作ることができます。
プログラミングスクールはオンラインで自宅レッスンできる所も多いので、生活スタイルに合わせて通えるのも利点です。
プログラミングが学べるアプリ
子供がプログラミングを学べるアプリを活用するのもおすすめです。
先ほど紹介したScratchも無料のアプリで、パソコンかタブレットで利用できます。Scratchで作ったゲームはネットで公開してみんなに遊んでもらえるので、子供のモチベーションも高くなるでしょう。
Scratch以外では、「Viscuit(ビスケット)」というアプリも有名です。Viscuitは子供でもゲームや絵本が作れる簡単なプログラム言語で、スマホでも使うことができます。
プログラミングが学べるボードゲーム
パソコンやスマホを使わない方法がよいなら、プログラミング的思考が学べるボードゲームがおすすめです。
こういったボードゲームでは、ゲームの中にプログラミング的思考を使う要素が入っており、楽しみながら学べるようになっています。
グーグルのプログラマーが自分の子供に遊ばせるために開発した、「ロボット・タートルズ」などが有名です。
子供向けのプログラミング本
プログラミングが学べる本も、子供向けの良書がたくさんあります。
プログラミング本は、基本的にScratchやViscuitの使い方を解説したものが多いですが、「ルビィのぼうけん」のような、絵本でプログラミング的思考が身につく本もあります。
料理や買い物など日常生活を通して
料理や買い物などの日常生活は、プログラミング的思考を自然に身につけるのにピッタリです。
料理や買い物などで子供にプログラミング的思考を身につけさせるコツは、手順を自分で考えさせることです。
「まずあれをしなさい」「次はこれをしなさい」と指示を与えるだけでは、その作業のやり方を身につける練習にはなりますが、プログラミング的思考は育ちません。
一方、「この料理を作りたいんだけど、どうやって作ればいいと思う?」といった感じで手順を考えさせると、自然とプログラミング的思考が育ちます。
もし子供が間違った時は、叱ったりすぐに答えを教えるのではなく、「どこを直せばいいかな?」と子ども自身に検討・分析させるとさらに効果的です。
早い段階でプログラミング的思考を育てよう!
プログラミング的思考とは論理的思考の一種で、「抽象化」「分解」など5つの要素から成り立っています。
2020年からは小学校でもプログラミング教育が始まるので、これからはIT技術者を目指す人以外にも必須の能力となるでしょう。
プログラミング的思考は、就職や年収アップから、家事などの日常生活まで、人生のあらゆる場面で活用できるのでとても大事です。
最近は、アプリやボードゲームなど、子供でもプログラミング的思考を楽しく学べる教材があるので、これらを活用して早い段階でお子さんのプログラミング的思考を育てましょう!